2006年12月アーカイブ

第5回六カ国協議が約1年1カ月ぶりに2006年12月18日から22日まで、北京で行われた。
日本の報道では、これといった成果がないまま、次回の日程も決められずに休会した、と報道されているが、六カ国協議は本当に行き詰まり、危機にあるのだろうか。

今回の協議では、米朝間の金融制裁に関する協議が行われ、グレーザー米財務副次官補と呉光哲朝鮮貿易銀行総裁が出席した。結局物別れに終わったと報道されているが、19日の段階で、グレーザー次官補は「意見交換を行う良い機会だった」と語っている。そして、来年1月にニューヨークで協議を再開することに合意して終了している。また、本体の会談でも、再開の合意自体はなされている

金融制裁に関する協議は、核問題に関する会談が行われた釣魚台国賓館ではなく、19日は米国大使館で、20日は朝鮮大使館でそれぞれ開催された。開催場所が双方の大使館であったと意義は大変大きい。今回の金融制裁に関する協議は、六カ国協議の枠内で米朝間がはじめて本格的な直接対話を行ったと言うことを意味するからである。

これまで朝鮮と直接交渉することを嫌ってきたアメリカがこのような変化を見せたことは、六カ国協議の実質的な進展をもたらす契機となる可能性がある。朝鮮は、アメリカの出方をじっくりと観察した。朝鮮にとって、今回の六カ国協議はアメリカが朝鮮に対する敵視政策を見直すつもりがあるのかどうかを確認するためのものであったと言えるだろう。

とはいえ、六カ国協議に実質的な進展がなければ、開催国としての中国の面子もつぶれてしまう。中国が提案した作業部会の設置についても合意できなかったことから、今回の朝鮮の対応には、中国もいらだちを募らせている。協議の再開までに米朝間で金融制裁問題解決への道筋がつけられるかどうかが、次回の会談の成否を決定する要因となるだろう。

朝鮮はアメリカの金融制裁は法執行の問題ではなく、非核化をめぐる外交交渉を有利に進めるための制裁措置であると考えている。不法行為に関連しない朝鮮の金融取引まで制裁の対象となっていることに対して大きな不満を持っているようだ。アメリカが不法行為に関連しない朝鮮の金融取引を再開できるようにすることが、この問題を解決するためには必要であろう。

朝鮮が偽造紙幣を製造していることは、確たる証拠がないものの間接証拠は多く出ているので、国際的には真実であると思われている。朝鮮がこの問題をアメリカの謀略と主張するのであれば、その証拠を出さなければ、国際世論はアメリカを支持するだろう(しかし、アメリカはイラクに大量破壊兵器がないのを知りながらも戦争を仕掛けたので、今回もそうであると考える人も少なくはない)。

一番簡単な解決策は、朝鮮が偽造紙幣問題などでアメリカの信頼が得られる措置をとることと引き替えに、今回総裁が協議に出てきた朝鮮の外国為替銀行である朝鮮貿易銀行がアメリカの銀行に口座を置いてコルレス取引ができるようにすることであろう。そうすれば、朝鮮は合法的な貿易決済などを滞りなく決済でき、アメリカは朝鮮の金融取引の合法性についてそれほど苦労せずともある程度の監視ができるようになる。

このように、六カ国協議は朝鮮の核放棄に関する協議進展のために必要な条件を二国間交渉で整備しているところで、実質的な進展が見られるのはもう少し先になるだろう。別の視点から見れば、六カ国協議は今回の協議から本格的な問題解決の場として機能しはじめたと言えるかもしれない。

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